HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチン 比較表 | |||
サーバリックス® | ガーダシル®水性懸濁注 | シルガード®9水性懸濁注 | |
剤 形 | |||
分 類 | 不活化ワクチン(L1タンパク質 ウイルス様粒子:VLP) | ||
成 分 | 組換え沈降2価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(イラクサギンウワバ細胞由来) | 組換え沈降4価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(酵母由来) | 組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン(酵母由来) |
遺伝子型 | 2 価 HPV 16/18型 |
4 価 HPV 6/11/16/18型 |
9 価 HPV 6/11/16/18/31/33/45/52/58型 |
国際誕生 | 2007年 5月 | 2006年 6月 | 2014年 12月 |
販売開始 | 2009年 12月 | 2011年 8月 | 2021年 2月 |
メーカー | GSK | MSD | |
定期接種 |
対 象 |
対象外:任意接種にて自費 | |
対象疾患 | 子宮頸癌及びその前駆病変(子宮頸部上皮内腫瘍 2, 3) | ||
ー | 外陰上皮内腫瘍・膣上皮内腫瘍 | ||
肛門癌及びその前駆病変(肛門上皮内腫瘍) | ー | ||
尖圭コンジローマ | |||
用法・用量 | 1回 0.5mL 合計 3 回 筋注 | ||
投与間隔 | 2回目:初回接種 1カ月後 3回目:初回接種 6カ月後 |
2回目:初回接種 2カ月後 3回目:初回接種 6カ月後 |
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年齢・性別 | 10歳以上の女性 | 9歳以上(男性も可) | 9歳以上の女性 |
供 給 | 出荷調整中 新規の初回接種は避ける |
安 定 供 給 | |
有効期間 | 4年 | 充てん日から3年 | |
アジュバント |
AS04 |
アルミニウムヒドロキシホスフェイト硫酸塩 | |
アルミニウムとして500μg | アルミニウムとして225μg | アルミニウムとして500μg | |
貯 法 | 遮光 2〜8℃ 凍結を避けて保存 | ||
保 存 剤 | チメロサールフリー |
※ 各製剤の添付文書・インタビューフォーム 参照
製剤写真はメーカーHPより一部変更し転載
2022年2月現在の情報にて、今後変化する可能性がありますのでご注意ください
子宮頸がん予防ワクチンの詳細な情報については日本産科婦人科学会のHPもご参照ください
https://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4
日本産科婦人科学会:子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために
端的に比較・使い分け(私見)
定期接種対象ならば、流通も安定しているガーダシル(4価)
尖圭コンジローマの予防効果もあり、唯一男性も接種可
女性の任意接種では、最もカバーする遺伝子型が多い(子宮頸がん原因の90%をカバー)シルガード9(9価)
アジュバントの違いから副反応はやや多いが、より長い効果を期待するならば、出荷調整が終了する サーバリックス(2価)
というような位置付けでしょうか
実際には詳細な違い、費用、取扱状況などを含めて検討することになると思います。
定期接種対象(2022年2月現在)
公費助成の定期接種は サーバリックス(2価)及び ガーダシル(4価)が 対象
シルガードは(9価)は 年齢問わず任意接種となるため自己負担が発生します。
※ 定期接種の対象外(年齢・性別)の方は、どの製剤を選択しても任意接種となります。
定期接種 対象疾病 | |
A類疾病(公費負担) 【集団予防・重篤な疾患の予防】 |
ジフテリア |
百日咳 | |
破傷風 | |
急性灰白髄炎(ポリオ) | |
B型肝炎 | |
Hib感染症 | |
肺炎球菌感染症(小児) | |
結 核 | |
麻 疹 | |
風 疹 | |
水 痘 | |
日本脳炎 | |
ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症 | |
ロタウイルス | |
B類疾病(一部公費負担) |
季節性インフルエンザ |
肺炎球菌感染症(高齢者) |
供給面(経緯と2022年2月現在の状況)
○ 2020年10月〜
サーバリックスの出荷調整(需要の急増に供給が追いつかない為)
https://www.mhlw.go.jp/content/000688629.pdf
厚生労働省:ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチンの供給見通しについて
HPVワクチンの交差接種は推奨されないため、新規のサーバリックス初回接種を当面差し控えることに
(既にサーバリックスで初回接種済の方へ、2回目及び3回目接種分を確保するため)
供給安定までは新規の定期接種はガーダシル(4価)へ(需要増へはMSDが増産で対応)
○ 2022年1月〜
サーバリックスの供給改善の見通しにて初回接種 再開へ
https://www.mhlw.go.jp/content/000888627.pdf
厚生労働省:ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン「サーバリックス」の供給見通しについて(令和4年1月28日事務連絡)
まとめると、需要増による出荷調整が解除され、サーバリックスの初回接種への使用も2022年2月現在では再開します。
ただし、実際にはまだどの程度の実際にすぐに薬剤が手に入るのか(流通レベルで)不透明な部分もあり、時施設では医師らと協議しながら、もう少しの間は任意接種含めても、基本的にはガーダシル(4価)、シルガード9(9価)で検討していくことになりそうです。
カバーするHPV遺伝子型
HPVはパポバウイルス科に属するエンベロープを持たないDNAウイルスで、100種類以上のウイルス型が存在します。
その中で、子宮頸がんの原因となるのは粘膜 ハイリスク型に分類されるもので
HPV 16型, 18型, 31型, 33型, 35型, 39型, 45型, 51型, 52型, 56型, 58型, 59型, 68型
が含まれます。
サーバリックス、ガーダシルは16型・18型(子宮頸がん原因の70%)をカバーします。
シルガード9では、それに加えて31型, 33型, 45型, 52型, 58型を含み、カバー率は90%へ上昇します。
ガーダシル、シルガード9に含まれる HPV 6型, 11型はローリスク型に分類され、STDの一つである尖圭コンジローマの原因ウイルスです。
4価または9価ワクチンでは、尖圭コンジローマの予防効果も得ることができます。
運用上の違い(シルガード9について)
シルガード9は 全例登録による強化安全監視活動 が必須となっており、接種医はe-learningの受講と「HPV9全例登録」が必要となります。
また、接種を受ける方へは「ワクチンQダイアリー」へ スマートフォン又はタブレット端末からアクセスして登録・入力してもらうことが必要です。
https://www.msdconnect.jp/wp-content/uploads/sites/5/2021/09/hpv9-all-subject-registration_d01.pdf
MSD Connect:シルガード®9全例登録専用ページより
今後の展望
9価ワクチンについては、任意接種であり機会は多くはないかと思いますが、全例登録などがありやや煩雑な印象ですね。
しかし、カバー範囲などを考えると、今後定期接種として認められれば主流となってくるところかもしれません。
現状では、主となる定期接種はサーバリックス(2価)とガーダシル(4価)選択。
ただし、サーバリックスは最近までの出荷調整がありましたので慎重に。
新規の任意接種では、シルガード9(9価)を含めて3剤から検討。
というところになるかと思います。
今後は、他のワクチンの動向についても別記事でまとめられればと思います。
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