当直などで、抗菌薬の問い合わせにどう対応したらいいか不安
病棟配属になって、先生から抗菌薬についてよく相談されるから勉強しないと……
抗菌薬選択の考え方とかTDMについて、そろそろ体系的に勉強してみたい
はじめに
病院薬剤師として感染・抗菌薬適正使用支援に従事した約10年の実務経験を踏まえて、初めの1冊から、実際のコンサルト対応・相談応需や症例で悩んだ時に参照している、主な3次資料でおすすめしたいものをご紹介します。
定番的な書籍が多くなるため、すでに実務にICTやASTで業務に従事している方には、既にご存じの内容も多くなるかとは存じますがご容赦ください。
さて、当施設では今年も1年目の若手たちが、当直や日勤(休日の当番勤務)デビューする時期がやってきました。
慢性的な人手不足もあり、当直デビュー前の“練習当直”(当施設では、一人で当直に入る前に、5年次以降の先輩と2人での勤務を2回こなして、お墨付きをもらうと晴れて一人当直デビューとなります)にお付き合いさせて頂きました。
この度自分が業務異動で別の領域(がん)を勉強し始めて、初心に帰る…ではないですが
困ったら、ASTとか“感染に詳しい先輩”に聞けばいいから、自分で詳しく調べたことないや・・・
医薬品集くらいは持っているけど、いざ聞かれたら、抗菌薬は何をどう調べたらいいの??
供給制限で⚫︎⚫︎がない・・・こんな時に代替薬ってどう考えればいいの??
今日入院の患者さんがペニシリンアレルギーだって先生に相談されちゃった・・・どうしたらいい??
感染とか抗菌薬って興味はあるけど、わからないことがたくさんあって、何から勉強したらいいかわからない
最初の一冊におすすめの本を(分厚い辞書みたいな本以外で)教えて欲しい
こんな声を今まで、何度も何度も、耳にしてきました
その度に(感染・抗微生物薬・薬物動態の面白さと共に)微力ながら、自分が勉強で使ってきた本などをお伝えしていました。
試行錯誤の中で、「これは最初から読みたかった!」「この本が自分の若手の頃にあったら……」といったことも多くありましたので、今回まとめてみました。
基礎固めに、初めの1冊
もう迷わない! 抗菌薬Navi 改訂3版(2021年)

もう迷わない! 抗菌薬Navi 改訂3版
監修:三鴨 廣繁
編著:坂野 昌志
https://amzn.to/49QHeWn
【特徴】
薬剤師が著者の書籍で、抗微生物薬の全般を学ぶことができます。
【おすすめポイント】
医師が著者の良い本もたくさんあるのですが、やはり1冊目には、作用機序や薬物動態・相互作用、細かな用法用量や保険上の適応症など、薬剤師業務において重要なポイントが詳細に記載されている薬剤師著のこの本をおすすめしたいと思います。関連学会で著名な三鴨先生監修でもあり、化学療法学会の認定薬剤師試験の勉強素材にも良いかと思います。現行版が約4年前となる為、新規薬剤やTDMガイドラインの改訂内容などの個別アップデートは自身で行う必要がありますが、それを差し引いてもおすすめします。版を重ねる毎に購入しており、次の改訂にも期待しております。
【筆者の活用事例】
まずは、本書のような安定した(偏りがない)本を通読して、各系統の抗菌薬のキャラクターを掴むことが、その後の本質的な理解への早道となります。一度で理解して覚えるのは一般的には困難と思いますので、詳細解説部分は一度流し読みでも構いませんので、概要だけでも通読することが大事です。
詳細部分は、実症例で当たった際に振り返るなどで読み返していくと良いかと思います。
当方は当時基礎知識が乏しく、いきなり本書を読むにはやや厳しかった為、2冊目として活用しましたが、手に取ってみて、理解に問題がなければ1冊目としてもおすすめできます。
絶対わかる抗菌薬はじめの一歩(2010年)

絶対わかる抗菌薬はじめの一歩(2010年)
一目でわかる重要ポイントと演習問題で使い方の基本をマスター
著者:矢野 晴美
https://amzn.to/3LHuoj7
【特徴】
タイトルに偽りなし、初学者向き!
わかりやすさ、各系統・薬剤毎の臨床的な使いどころ・核となるイメージ作りに。
【おすすめポイント】
医師著者にて、薬物動態や用法用量などへの言及は少ないですが、背景知識がない初学者の状態だと、どうしても無味乾燥とした文字の羅列に見えてしまいがちな各抗菌薬のイメージ、臨床的使いどころについて(感染臓器や、カバーする微生物の中でも、実際に臨床で薬剤選択の際に重要となる部分に絞って)わかりやすく解説してくれているのが非常にありがたい本です。
15年前と発行がやや古い為、新規薬剤や近年のアップデートなどは反映されていませんが、教科書レベルの各薬剤の標準的な使い所がわかる点で現在でも価値があると思います。
医学書としては価格も安くおすすめです。
【筆者の活用事例】
抗菌薬Naviと同時購入しましたが、上記の通り当方は理解の為にこちらを1冊目として読みました。日臨床の中でも、1冊でも通読しきって、各薬剤のキャラクターをつかめていると、例えば副作用やアレルギー歴で代替薬を考えたりといった場面でも、何を目的に医師がその薬剤を選択しているのか・どういった特徴がある薬剤であればそれが代替できるのかといった点を考えることができますので、そういう意味でも非常に助けられた1冊になります。何度も繰り返し通読して血肉とした本でもあり、後輩にも初めの1冊として何度もおすすめさせて頂きました。
テキスト関連 体系的に学習し、理解を深める
抗菌薬適正使用生涯教育テキスト 第3版(2020年)
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抗菌薬適正使用生涯教育テキスト 第3版(2020年)
日本化学療法学会(編)
全286頁
定価:4,400円
https://www.chemotherapy.or.jp/modules/publications/index.php?content_id=9
【特徴】
日本化学療法学会(JSC:通称 化療)による医師及び薬剤師向けのテキスト。化療にて年数回、定期的に開催される抗菌薬適正使用生涯教育セミナーの内容と連動している書籍となります。
学会直販の為、書店で現物を確認したりAmazonなどで購入ができないのが不便な点。送料はかかりますが、非学会員であっても購入可能ですのでお気軽にどうぞ。学会に入っている先輩が施設にいれば、(特に学会割引はありませんが)購入を相談してみてもいいかも知れません。きっとあなたに対して、「感染に興味を持ってくれたんだ……!!」という熱いシンパシーを感じて今後丁寧に指導してくれるのではないかと思います。笑
複数著者にて項目毎に程度の差はあるが、現場や学会で活躍する著者らによる専門的な内容で非常に勉強になります。ただし、初学者向けとしては高度な内容もあり、いきなり取り組むと挫折のおそれがある為、基礎を固めた上で臨むのが良いと思います。
【おすすめポイント】
後述のグラトレにも同様の詳細があり、近年は他の箇所でも類似のまとめが増えてきていますが、佐賀大学病院の浦上先生作成かと思われる、今回の版から追加された抗菌薬のスペクトル表が非常にわかりやすいです。
抗菌薬の各論的な内容については、本書のレベルまで把握していれば(臨床感染症学としての細かい部分や使い方を除いた、薬理的な意味では)十分と思われる水準です。
【筆者の活用事例】
総論や、臨床で汎用されるβ-lactam系薬について重点的に学習し、あとは臨床で必要となった時に戻ってくる形で活用していました。
このスペクトル表に初めて出会ったのは、2019年頃の講習会での浦上先生の講義でしたが、衝撃的でした。似たようなものを各所で目にしたことはありましたが、グルーピングの取り方・表記の仕方などが極めて洗練・整理されていて、実臨床の使い分けの考え方に則しており、非常にわかりやすかったです。駆け出しの勉強し始めの時期にこれがあれば、薬剤毎の理解がもっと早かったと思いますので、抗菌スペクトルの差異を説明する際に活用させていただいています。
抗菌化学療法認定薬剤師テキスト 改訂版(2021)

抗菌化学療法認定薬剤師テキスト 改訂版(2021)
~薬剤師が知っておきたい感染症と抗菌化学療法~
編集:日本化学療法学会 抗菌化学療法認定薬剤師認定委員会
全385頁
定価:5,500円
https://www.chemotherapy.or.jp/modules/publications/index.php?content_id=9
【特徴】
言わずと知れた、日本化学療法学会による抗菌化学療法認定薬剤師(IDCP: Infectious Disease Chemotherapy Pharmacist)認定試験の公式テキスト。学会直販という点は↑の生涯教育テキストと同様です。
【おすすめポイント】
生涯教育テキストが抗菌薬の分類毎に記載されているのと対照的に、代表的な疾患・感染臓器毎に薬剤師が抗菌化学療法に関わる上で重要となる診断・検査などについても記載されています。抗菌薬についてある程度基礎固めができてきた頃に、感染臓器・患者背景毎の想定すべき病原微生物などを体系的に学習していくのに適していると思います。
【筆者の活用事例】
当方は、改訂のタイミングなどもあり、入手がだいぶ後年となってしまいました。
主要な感染臓器毎に整理されており、知識が薬一辺倒にならないよう、“最初の1冊”で基礎固めが終わった時期から、臨床感染症学としての全体像を意識して取り組み始めていくのがおすすめです。
(薬剤師が実際に日々現場で相談応需するのは、用法用量・PK-PDや相互作用、抗MRSA薬の選択やTDMなどの細かい部分に偏りがちなのでついつい薬の勉強を先行しがち……という反省から)“抗菌薬マニア”になるよりも先に、臓器毎の感染症診療の標準的な知識を身につけていく方が、実際に目の前の患者さんに適した薬剤選択を検討したり、AST内や主治医とのディスカッションへの早道となるかと思います。
日々の臨床を支える 常にあなたの手元に……
新訂第4版 感染症診療の手引き(2021年)

新訂第4版 感染症診療の手引き 正しい感染症診療と抗菌薬適正使用を目指して
編著:感染症診療の手引き編集委員会
全139頁
定価:1,430円
https://amzn.to/47DvLYR
【特徴】
数あるマニュアル類の中でも随一の簡潔さ。そしてオープンソースということで施設内マニュアルの作成・改訂時にも頼りになります。
【おすすめポイント】
元々、大曲先生の著作から始まっている為、総論的な項目(症例アセスメントの手引き、感染症診療のロジック、抗菌薬の適正使用)がどれも非常に実践的にまとめられており、大変参考になります。
臓器別のマネジメントについても、診断・治療のポイントがまとめられていて参考になる上に、抗菌薬についても簡潔な推奨となっており(たくさんの推奨が列挙されていたり、利益相反が頭によぎってしまうような一部のガイドとは異なり)状況に応じた標準的な薬剤が、PK-PDを考慮した適切な用量で記載されており、信頼できることが伝わってきます。
書籍購入で、PDF版をダウンロードできるのも時代に合っていてありがたいです。
【筆者の活用事例】
昨今のマニュアル・ガイドの中でも随一の携帯性で、プラチナマニュアルと並んで真のポケットサイズを維持していると言えます。原理・原則的な部分の確認を含めて、常にスクラブのポケットに入れて、活用しています。
感染症プラチナマニュアル Ver.9 2025-2026

感染症プラチナマニュアル Ver.9 2025-2026
著:岡 秀昭
全676頁
定価:2,750円(拡大版のグランデ:4,180円)
https://amzn.to/4nPTnyl (通常版)
https://amzn.to/49o0MRX (拡大版:Grande)
【特徴】
言わずと知れた“プラチナ”(公式略称はプラマニュのようですが……)岡先生の代表作。感染に関わる方ならば知らない方はいないでしょう。初版が出た際、その充実ぶりに感銘を受けましたが、その後のアップデートにも本当に頭が下がります。
臨床で疑問に思った時、すぐに推奨やエビデンスが思い浮かばない時に、最初に確認する1冊となるでしょう。熟練の感染症専門医たちも、手元に置いて使っていることから、その立ち位置がお分かりいただけるでしょう。
この改訂頻度とボリュームで、この価格ははっきり言って破格です。買って後悔はしません。
ポケットに入れたい場合は通常版、それ以外ならば内容は同じですが拡大版のグランデが見やすいです。
【おすすめポイント】
驚愕の改訂頻度、凄まじい程スピード感で最新のエビデンスを加えたマニュアルが手元にある安心感。新人や病棟配属を機に、困った時に調べる用の本が何か1冊欲しいという方には、まずはこちらをおすすめしています。
特に感染臓器や原因微生物毎の、最新のエビデンスに基づいた抗菌薬選択や推奨用量の確認に秀でている印象です。
【筆者の活用事例】
その名の通り、自身のマニュアルとして活用中です。通読というよりは、その都度必要な箇所を辞書的に参照するイメージです。
常に手元に置いておき、提案内容を検討する際、自分の導いた答えがエビデンスに基づいた最新の標準的な推奨と大きくずれていないかの確認に。また、上手くいかなかったり、得意でない分野や、知識がやや曖昧な領域に当たった際に、成書や文献に当たる前に、まずはプラチナを確認します。
日本語版 サンフォード感染症治療ガイド 2025(第55版)

日本語版サンフォード感染症治療ガイド2025
全480頁
定価:4,840円
https://amzn.to/4nVExGn
【特徴】
“サンフォード”、“熱病”として、臨床現場で圧倒的な信頼を置かれ続ける、言わずと知れた1冊。
エビデンスのアップデートも細やかで、専門分野として取り組むなら最低でも2年に一度は改訂版を購入して手元に置いておきたい1冊。
【おすすめポイント】
多くの薬剤師が、最初に活用することになるのは、【腎機能障害患者への投与量】の項目でしょう。疑義照会で薬剤師側が添付文書や腎薬の推奨を元に確認・提案をした際に医師から「サンフォードの推奨量は⚫︎⚫︎なので、このままで」と言われてしまいました・・・という相談をよく受けます。
PK-PDなどの概念が確立している抗微生物薬の用法・用量についての提案で、この文言で返されて終わりというのは正直ちょっと……という思いがあります。施設内で推奨する用量基準が決まっている場合は良いのですが、それがない場合には、まずは本書のような多くの医師が参照するガイドの情報(+専門として行う場合には、その元文献と理論背景など)を把握した上で、患者個々の薬物動態や病態の違いに関連する副作用リスクや、国内の保険用量上の問題、施設内での基準や、実際に投与する際の現場での負担を考慮した医療安全上の問題(体重毎の細かすぎる調整で、毎回調製が大変な端数が出る用量や、投与間隔・時間の設定など)などを考慮した提案を行なって欲しいと思います。
相手も、“サンフォード”や “Up to date”の推奨は⚫︎ですが・・・と共通言語となるようなガイドを踏まえた上での疑義照会であることを伝えていけば、しっかりと話を聞いてくれると思います。特に国内のガイドや添付文書に記載がほぼない、CRRTにおける設定毎やARC時などの推奨が細かく記載されており、救命救急・集中治療領域などでは活用の機会は多いのではないでしょうか。
ただし、まだ国内の保険上限量との乖離はありますので、適切に情報提供した上で、施設内でのルールに則って対応する必要がありますのでご注意ください。
また、感染領域を担当していくと、感染臓器や原因微生物が特定された際の、標的治療への移行(de-escalation)時の薬剤選択を検討したり、相談を受ける機会が多くなるかと思います。プラチナマニュアルと並行して、原因菌に応じた適切な選択を調べる際に、活用の機会が多くなると思います。特にややマイナーな菌種が起因菌として同定された場合、最新の各種ガイドラインや文献をまとめてくれているので非常に頼りになります。
筆者が入職した頃は、製薬メーカーが最新版を薬剤部にも何冊か配っていたので、気が付くとあちこちにあったものですが、近年はそうした慣習が一掃され、一部の(興味がある・日常的に使う機会がある)人しか持たなくなってきているのが残念なところです。
【筆者の活用事例】
・腎機能低下患者の処方で、過量では or この端数・煩雑な用量は一体……と思った際に
→ “サンフォード準拠” の処方か否かの確認 → 疑義照会の方向性や戦略の決定
・腎機能低下患者で、国内のガイドの推奨量がやや少ないと感じた際の確認に
→ 両者を参照した上でどう設計するのは臨床状況に応じて検討して決定するべき
・当直対応などで、他のガイドで対応しづらい状況(CHDFなど)の用量問い合わせを受けた際に
・抗菌薬の変更提案などを行う際に、合わせて提案する用量の検討のために
・起因菌の判明後に臓器と原因微生物に応じた適切な標的治療の選択のために
腎機能別薬剤投与量 POCKET BOOK 第5版(2024年)

腎機能別薬剤投与量 POCKET BOOK 第5版
編集:日本腎臓病薬物療法学会 腎機能別薬剤投与方法一覧作成委員会
全616頁
定価:4,180円
文献検索する前に……困った時の道標、臨床感染症のバイブル
レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版(2020年)

レジデントのための感染症診療マニュアル 第4版
著:青木 眞
全 1,720頁
定価:13,200円
https://amzn.to/4a9GXxQ
【特徴】
言わずと知れた、日本の臨床感染症の聖書(バイブル)
通称:青木本
【おすすめポイント】
日本語の臨床感染症の教科書で、最も充実した1冊といって間違いないでしょう。
その分厚さから、全体の通読はなかなか難しいですが、臨床で困った時、悩んだ時に必ず開く本です。
ぜひ、臨床感染症・抗菌薬適正使用に携わる際のお手元に。
【筆者の活用事例】
・臨床経過がいつもと違う、上手くいっていない時
・第一選択薬が(副作用や供給面で)使えない場合
・感染臓器と原因菌に応じた第一選択薬を使っているのに改善しない場合
など、困った時に何度も参考にさせていただき、助けられています。
シュロスバーグの臨床感染症学 第2版(2024年)

シュロスバーグの臨床感染症学 第2版
監訳:岩田健太郎
全 1,328頁
定価:25,850円
https://amzn.to/4rk4fr3
【特徴】
日本語で読める、本場の臨床感染症学の教科書。
大判なので、持ち運びは困難ですが、デスクでの辞書的使用や学習に。
【おすすめポイント】
英語のMandellはハードルが高い……という方にぜひ。
レジデントのための感染症診療マニュアル(青木本)は日常臨床の中での困った時に開く本ですが、こちらは原理原則や基礎を学ぶ、確認する意味合いが強いでしょうか。
【筆者の活用事例】
・臨床でのややマイナーな疾患や原因微生物についての確認・学習に
・症例検討やディスカッションを行う際の基礎的事項の確認に
・マニュアルやドキュメント作成の裏取りに
単著を読んで、知見を広め、理解を深める
単著の各書籍は、基礎固めが終わっていれば、どのタイミングで読み進めても差し支えないかと思います。テキスト学習で行き詰まった時の息抜きや、抗菌薬関連の勉強はもう十分……と思った時におすすめです。
感染症非専門医・薬剤師のための 感染症コンサルテーション(2014年)

感染症非専門医・薬剤師のための 感染症コンサルテーション
著:岸田直樹
全308頁
定価:3,520円
https://amzn.to/3Xxb4HX
【特徴】
感染症専門医が不在の施設で、ASTの薬剤師が相談を受けることが多いCommonな疾患・状況において臨床感染症の観点から解説してくれています。単著で文体も語り口調で柔らかく、通読が容易に可能です。腰を据えて勉強するテキストというよりは、通勤の途中や余暇の時間などに、少しずつ読んで血肉にしていく本というところでしょうか。
【おすすめポイント】
症例に応じた、各種ガイドラインや文献などを用いた感染症診療関する内容自体も非常に勉強になりますが、特筆すべきは、“治療をスムーズに進めるコンサルテーションのコツ” の部分です。コンサルタントとして相談を受けた際に、いかに主治医の先生に対して、必要な内容を提案して受け入れてもらうか(または難しい場合の“未来の約束”などやり方など)についてが実践的に記載されています。
感染に関しては、時には熱くディスカッションをして戦わなければならない場合や相手がいることも事実ですが、多くの場合はコミュニケーションの仕方を工夫して、主治医の先生に寄り添いながら支援を行なっていくのが、最終的には患者さんのためになることが多いものです。上司と主治医間や、感染制御部と主治医間で、板挟みになることもあるでしょう。そんな時に、主治医の先生とのコミュニケーションや他職種への配慮などを実際の現場の生のアドバイスをしてくれている本稿は非常に参考になりました。刊行から10年経っており、各種エビデンスはやや古くなっていますが、こうしたコミュニケーションに関する部分や、感染症診療の原則については大きく変わりはありません。
改訂を期待しつつ、AST業務を始めたばかりの方にはぜひご一読をおすすめします。
【筆者の活用事例】
ちょうどAST業務を始める前くらいに読んでいて、その後実際に自分が活動するようになって改めて読んだ際に、非常に参考になったと感じました。
昨今は時代の変化により理解は進んできていますが、それでもまだ、ASTでの提案内容は伝え方を上手く工夫しないと、主治医の先生方から煙たがられてしまうことがあるのも現実だと思います。そうした際に(感染症診療や抗菌薬適正使用に全く無理解な、旧態依然とした極一部の医師は除く……)伝え方やコミュニケーションの方法、折り合いの付け方を工夫することで良好な関係を構築し、困った時や上手くいかない時にも、すぐに相談してもらえるようにしていくための一助となると思います。
対人コミュニケーションスキルに特に自信がある方には不要かも知れませんが、多くの方には参考になる部分があるのではないかと思います。
グラトレ グラム染色アプローチで最適な抗菌薬を選択できる!(2023年)

グラトレ グラム染色アプローチで最適な抗菌薬を選択できる!
著:浦上 宗治
全208頁
定価:3,960円
【特徴】
佐賀大病院 浦上先生の著作。
グラム染色で得られる情報を、培養結果が確定するまでの間の初期抗菌薬選択に結びつける考え方のプロセスを、ASTの薬剤師の立場で学ぶことができる。
【おすすめポイント】
グラム染色を自分で習得し、必要な時には自分でも行うのがベストではあるが、専任の施設ではマンパワー面から困難な施設が多いです。しかし、自分のようにグラム染色は自分でできていなくても、検査技師さんへグラム染色の情報を確認したり、ASTのカンファで速報の情報を得た際に、感染臓器とその疫学を基に「グラム染色の情報から⚫︎(菌)をカバーする必要があるために、⚫︎(抗菌薬)を選択する」という流れが理論的にわかりやすく説明されているため、非常に勉強になります。
グラム染色をこれから自分でも勉強してやってみたいという方はもちろんですが、興味はあるし理解はしたいけど現実的には難しい……という方にも間違いなくおすすめできる1冊です。
【筆者の活用事例】
・院内のcommonな感染症が薬剤師向けに丁寧に取り上げられているので、疫学や解剖の整理に
・グラム染色の図表や特徴などを学び、検査室に情報を取りに行く為の勉強に
・Empiric therapy、初期選択の段階で、広域抗菌薬以外で始めることを、理論的・わかりやすく主治医に説明する為の学習として
・微生物のグルーピングとスペクトル表
抗菌薬BOOK&MAP(2022年)

抗菌薬BOOK&MAP
抗菌薬治療の要点解説書(抗菌薬 BOOK)1 冊 と 抗菌薬詳細一覧表(抗菌薬 MAP) 2 枚
著:佐野 邦明
監修:笠原 敬
https://amzn.to/49C9CLZ
【特徴】
臨床現場で、ベッドサイドで、必ず役に立つ珠玉の知識。
叩き上げの臨床薬剤師の頭の中にあるデータベースの具現化。
【おすすめポイント】
以前よりわかりやすいスライドで有名な、尊敬する佐野先生の著作。
MAP
それなりに実務をこなしていくと、断片的に似たような情報をいくつか持っていたり、まとめていたりすると思いますが、それを軽々と超えて必要な情報が整理されてまとまっています。
BOOK
臨床で判断に悩んだり、まだ答えがないことに対する、佐野先生なりの解答や洞察が素晴らしく勉強になります。特にβ-ラクタムのアレルギーに関する章は、自分の対応を見直すきっかけとなりました。
抗菌薬についてあらかた勉強して、もうどの本を読んでも目新しいことはないな……と感じるようになった方でも、本書は得るものがあります。ぜひご一読いただければと存じます。
【筆者の活用事例】
・MAPの記載を参考に、マイデータベースのアップデート
・BOOKで、現場目線の深い知識を得る
・β-ラクタム系にアレルギーがある場合の対応を詳しく学ぶ

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